短い話  ②  鏡



家にいる、と決めた日はお化粧をしなくなった。
庭の花を見たり手入れするのは夕方、日が沈む少し前。日焼けを気にして。

そうして、そうやって過ごした日の夜は肌の調子がいい。
お化粧ってやっぱり負担なのかな?と思ってしまう・・・
だからといってお化粧しないで仕事に行く勇気はない。勇気っていうのかな?

横顔を鏡に映す。
わざわざ綺麗に見える角度を探しながら。
少しずつ弛んでいく皮膚に、諦めと少しの希望を持って、飽かず眺める。

おもいっきり笑ってみる。口角を上げて。
目を目一杯開いてみたり、ぎゅっと閉じてみたり。
顔のエクササイズらしい。

せっかく綺麗な肌になっているのに、見せる相手は遠い。
頬を寄せ合う時間はおろか、面と向かって会う機会もない。
暢気に話して笑っていた日々の、しあわせ度合いを改めて知る。
あれほどあった不安や不満の波も、今は凪いでいる。
穏やかと言えば穏やかなのかもしれないけれど。

鏡に横顔を映す。
右側を少し多めに映るように角度を決めて。
そして少し上を向いて。
顎のラインはこんなものかな?

今夜の雨は止みそうにない。
傘を差して並んで歩く日を、
ちょっとだけ考えながら正面を向く。
私は花柄の傘。あの人は紺色の傘だったっけ・・・

いつもの部屋が映っている。
切なさ、が鏡の中に混じる。
ほんのちょっとだけ。
DSC_1725.JPG

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