一縷の望み

そんな言葉が頭の中をぐるぐる。
でも、ほんとうは知っている。
それは100パーセントありえないことだと。

それでも、一縷の望み。
こんな言葉に縋りつきたくなることが、いまさらくるなんて。


振りきった言葉にどれほどの後悔を残しながら、私が出て行ったのか。
今となってはそれもあやふや。

開くのも怖かったメールには過去形だけが続いて。

それでも送り続けたメールに、返ってきたメッセージ。
明日の2時に。
そっけない文字に頑なさが滲む。
「ごめんね」と返すのが精一杯。

向かい合って座る、二人の前にはたっぷりのアイス珈琲。
ため息、ため息、ため息。
外に出たい、の一言しかいえない。

春の日ざしの柔らかさとあたたかさ、風の心地よさ、やけに沁みて。
芽吹きの黄緑が東京にもスタートの時期があることを伝える。
自然のグラデーションに、少し落ちつく。

近くの公園を歩きながら、何を話したのか、何を考えたのか。
はなみずき、赤く色づき始めて・・・そういえば、今日のラッキーカラー、赤だったんだ・・・なんてとりとめもなく思う。はずれたね・・・。
こんなところにバイカウツギ、葉の緑がまだ初々しく。

見つけたオープンテラスに、隣り合わせに座るけれど・・・今までより少し離れた距離が、訳もなく涙を誘う。
何から話せばよいのか、何を伝えればよいのか。
届かない言葉をいくつ呑みこんだのか、
言葉の弱さをただ哀しく。

「顔、触っていい?」
掌のあたたかさが何度も伝わる。

沈黙の時間、自分の腕時計、秒針・・・もう5周目。
彼の時計、こんなのだったんだ・・・知っているようで知らない事まだまだいっぱいあるのに。
時間は容赦なく。
あと5分・・・。


「今日はこれからどうするの?帰るよね?」
「えっ?・・・・・・・今日じゃなきゃだめなの?」
「・・・・・・」
「七時なら・・・・」
「じゃあ、七時に。いつものとこで。」
「・・・・・・・うん」

これが最後のデートなのか、もう一度のデートなのか、
頭はこんがらかったままに。
でも、最後のチャンス、なことだけは確か。
逃せない。

飛び乗る電車に心は逸るばかり。


一縷の望み。
不意に浮かぶ言葉。
泣けてきちゃう。
それでも、急がずにはいられない。

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